セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング(STP) の考え方
- セグメンテーション・ターゲッティング・ポジショニングとは、選択と集中を行う手順です
- それにより経営資源を最適な形で投入することで競合に勝つことができます
詳しくは以下のコラムで
「誰に」を決めるステップ
マーケティング戦略とは簡単に言えば、「誰に」、「何を」、「どうやって」価値を提供して対価を頂くかということです。ですから戦略をつくるにはまず「誰に」を決めなければなりません。「誰に」とは市場(マーケット)のことであり、戦う市場を決めて競合との差別化を図っていくことになります。その手順がセグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング(STP)といわれる方法です。
セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング(STP)とは、簡単にいうと市場をいくつかの切り口で細分化し(セグメンテーション)、そのなかから一つのグループを標的市場としてを選び(ターゲッティング)、選んだグループの中で競合とどのように差別化をするかを決める(ポジショニング)ことです。
セグメンテーションも、ターゲッティングも、ポジショニングも言葉としては良く知っていても、実際にそれぞれがどのように関係して戦略へと結びついていくのかを、きれいに頭の中で理解している人は多くないかもしれません。ここではセグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング(STP)の進め方を整理します。以下がステップです。
- Step1 市場の把握
あなたの会社が存在する市場と大きさを知る
- Step2 市場の分析
どのような切り口で分類できるかを見る、自社の特徴を考える
- Step3 セグメンテーション
どう分類するかを決める
- Step4 ターゲッティング
分類し終わったら、その中のどのセグメントで勝負するか決める
- Step5 ポジショニング
決めたセグメントで、どう差別化し独自の価値をつくり競争に勝つかを考える
Step1 市場規模の把握
市場とは商品・サービスなどが取引される概念的な場所です。そして、その場所にある特定のユーザーグループのニーズ・需要の大きさをある期間で特定したものが市場規模です。
グローバル市場というような大きな国や地域のレベルから、半導体業界といった業界レベル、半導体装置などの商品や用途レベル、半導体装置であればさらに細かくエッチング装置の市場など、レベルや切り口や定義はさまざまです。
ですから、あなたの会社が存在する市場を明確に定義することはなかなか難しいかもしれません。ポイントはあなたの会社のドメイン(活動領域)にある市場を大枠で捉えて、規模感をつかむことです。
まずはあなたの業界の市場について入手可能な様々な資料を見て調べて見ましょう。それらの資料は市場として捉えたい、捉えるべきという意向が反映された形でグルーピングされているかもしれません。新規市場に新たに参入する場合などは、市場の規模と魅力を調査会社等で詳細に調べることもあります。
市場規模は必ずしも決まった数字ではありません。ある条件から導かれたある商品やサービスの実際の需要がどの程度あるかを示した数字です。ざっくりあなたの会社の存在する市場規模を調べてみましょう。また市場を考える際には、次のような視点からの考察が必要になってきます。
- 最小市場規模
マーケティング活動などの刺激なしに存在する需要です。
- 潜在的市場規模
市場のもつ最大需要の上限、どんなにマーケティング費用をかけたとしても、これ以上の需要を引き出す事はできません。
- 予測市場規模
現在のマーケティング活動(費用)によって得られると予測される需要です。
- マーケティング活動で刺激できる範囲
最小市場規模と潜在的市場規模の差です。つまり、この差がマーケティング活動によって得られる需要の最大です。
- マーケットシャア(市場占有率)
現在の市場における、あなたの会社の商品やサービスが占める割合です。
- マーケット浸透率
現在の市場規模が潜在的市場規模のどの程度まで浸透しているかという事です。
- マーケットシェア浸透率
現在の市場規模でのマーケットシャアが潜在的市場におけるそれの、どの程度まで浸透しているかという事です。
あなたの会社が存在する市場と大きさを知りましょう。潜在的な市場規模が現在の市場規模より大きい、つまりこれから成長する魅力的な市場であること。その中で自社のマーケットシェア(市場占有率)を伸ばしていくのが最適なマーケティング活動です。
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Step2 市場の分析
市場規模を把握したら、市場をさまざまな切り口で眺め、あなたの会社が市場のなかのどのような位置にいるかを考えます。まずは現状分析の際に使ったデモグラフィックデータ、ファーモグラフィックデータ、サイコグラフィックデータ、行動分析等によって市場全体の傾向をつかみます。現状分析の際にすでにその傾向が見て取れているかも知れませんが、特に市場全体とあなたの会社の特徴の違いに注目しましょう。どのような切り口で分類できるかを見て、その分類の中での自社の特徴を考えてみましょう。
デモグラフィックデータ、ファーモグラフィックデータ、サイコグラフィックデータ、行動分析等について詳しくは以下のコラムをご参照ください。
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Step3 セグメンテ―ション
市場をさまざまな角度や切り口で眺めたら、市場を細分化します。市場を細分化することをマーケットセグメンテーションといいます。下の図の円が市場全体で黒い線が切り口と考えるとわかりやすいかもしれません。
セグメンテーションは、このようにいくつかの切り口かで分けることで細分化し、その中から標的市場を決め(ターゲッティング)、その標的市場に特化した適切なマーケティングミックス(マーケティングツールの組合せ)を開発するために行う作業です。
ですから市場のニーズ、自社の特徴・強みを考慮してマーケティングミックスを構成した際に、それが適切な市場の適切な範囲に効果的にリーチするように市場を細分化しなくてはいけません。
漠然とした切り口で切って、できたセグメントからターゲットを選ぶという訳ではありません。あなたの会社にとって意味をなさなかったり、細かすぎたり、リーチや実行不能な理論上のセグメンテーションには意味がありません。また必要以上に細分化しないのがポイントでもあります。
マーケティングミックスについて詳しくは以下のコラムをご参照ください。
セグメンテーションは以下の要件を満たしている事が必要です。
- 測定可能
セグメントの市場規模や範囲が測定できること
- 実質的
セグメントに分ける事に価値があること
- アプローチ、アクセス可能
無理に分けたとしても、そのセグメントにピンポイントでアプローチできなければ意味がない
- 差別化が可能
セグメントに違いが見出せなければ分けなくても同じ
- 実行可能
例えば費用やリソース、時間等から判断して実行可能か?
- ビジネスとなる市場規模があること
可能性のないものをいくら細かくしても全く意味なし
繰り返しになりますが、最終的にセグメントをきめる基準は、市場の本質的な魅力と自社の経営的な強みを発揮できることです。
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Step4 ターゲッティング
マーケットセグメンテーション(市場細分化)をしたら、細分化したマーケットのどのセグメンテーションに参入するかを決定します。下の図でいうと円は市場で黒い線が切り口です。この切り口によって細分化した市場から、1つもしくは複数の部分(セグメント)を標的市場として選ぶことをターゲッティングといいます。複数になる場合は、それに応じて複数のポジショニングとマーケティングミックスが存在する事になりますから注意しましょう。
最終的にセグメントをきめる基本的な基準は、市場の本質的な魅力と自社の経営的な強みを発揮できる事です。その為にもあなたの会社の成長や収益をもたらすコアコンピタンス(競合のまねのできない核となる能力)が何かを考える必要があります。現状分析からわかった問題点や戦略課題などを参考にしながら、競合他社と比較して自社にとって優位なセグメントを選びましょう。
以下のような要件を満たしている事が必要です。
- セグメンテーションの要件を満たしているか?細かすぎないか?
- 市場の本質的な魅力があるか?
- そのセグメントの規模は十分か、成長性はあるか?
- その成長性や規模は自社に適しているか?
- そのセグメントは自社のミッション・ビジョン・目標と合致しているか?
- 自社の経営的な強みや技術力はそのセグメントに向いているか?強みを発揮できるか?
- 現在の顧客プロファイルとの共通性が高いか?(既存市場の浸透を図る場合は特に)
ターゲットセグメント「誰に」と、マーケティングミックス「何を」提供するかのパターンに関しては以下のコラムをご参照ください。
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Step5 ポジショニング
標的市場がきまったら市場の中での競合状況と自社の位置づけ(ポジショニング)を考えましょう。ポジショニングは選択した標的市場の中であなたの会社のサービスや商品をいかにしてターゲットに印象づけ価格を上回る価値を伝えられるかということです。つまりはあなたの会社のサービスや商品の特徴や優位性を他と差別化し、明快でシンプルなマーケティングメッセージを創り上げることです。
下の図でいうとブルーの部分はセグメンテーションからターゲッティングをおこなった標的市場です。このなかであなたの会社はどの位置にくるかを考えます。例えば2×2マトリックスで考えた際に、縦軸が価格で横軸が機能性とします。ここでA社、B社、C社という競合が存在するときに、あなたの会社がどのような位置で戦うかを決めるのがポジショニングです。決めたセグメントで、どう差別化し独自の価値をつくり競争に勝つかを考えます。
ポジショニングをマトリックスで考える際は、いかのようなことを基準に軸を決めましょう。軸をどう取るかがポイントとなってきます。
- 顧客視点に立っての差別化を行うに適切か?
- 企業のイメージ、ミッション、ビジョンと連動しているか?
- 企業の優位性を端的に表しているか?ユニークか?
軸を決めた上で、競合他社の取り得る戦略としては大きく以下のような方法があります。
- 現在のポジションを強化する方法
- 空いているポジションを獲得する方法
- 競合相手をディポジショニング(案ての価値を下げる)する方法
あなたの会社のサービス・商品のメッセージとなるポジショングを決めたらそれを強化するマーケティングミックスを作り、そのメッセージを的確に、且つシンプルに標的市場に伝えましょう。それがマーケティングメッセージです。
また折角決めたポジショニングとマーケティングメッセージもめまぐるしく変化する環境の中においては永久に続くことはありませんので注意が必要です。継続的改善B2Bマーケティング戦略を行うことで変化の多い時代でも企業価値を保ち成長することができます。
標的市場を決めてメリハリをつけ、経営資源を最適な形で投入することで競合に勝つ基本となる手順の考え方が、セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング(STP)です。
2×2マトリクス法について詳しくは以下のコラムをご参照ください。
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