攻めの営業フレームワーク ― 営業効果を最大化させるセールスモデル
- 攻めの営業フレームワークとは、守りと攻めの視点から役割を明確にしたモデルです。
- それにより、営業マンのリソースを最大効果最大効率で活用することができます。
詳しくは以下のコラムで
営業のリソースを効果的に使えるかが分かれ道
今の変化の多い時代に競争に打ち勝つのは簡単ではありません。
会社の限りある経営資源(人などのリソース、キャッシュ、システムやモノ)を効果的に効率的に使うことが重要です。
経営資源の中でも最重要課題は人です。
人の提供する価値を最大限に活かすことができるか、反対にいうと人がかかわらなくてもすむところには、コストがかかる人を使わないかが分かれ道です。
中でも営業のリソースがポイントです。
デジタル化が進む中で、今まではみえていなかった営業活動もプロセス化とデータ化が進んでいます。
営業のリソースを効果的に使えていないという悩みを抱えている会社も多いのではと思います。
ここでは、いかに営業のリソースを効果的効率的に使うかを考えます。
顧客の選別、守りと攻め、役割分担、上から下へ
人的リソースを効果的につかうために考えるべきは、以下です。
- 顧客を選別すること(既存顧客のセグメンテーション)
- 攻めと守りの活動の明確化
- 明確な役割分担
- 下から上へシームレスに動かす(マーケティン活動と営業活動のシームレスな連携)
はじめにやるべきことは、今いる顧客(アカウント)を正しく選別することです。
顧客を正しく選別してメリハリをつけること、それによって攻めるほうに人的リソースを多く使うようにつることです。
パレートの法則にあるように、売上の8割は上位の2割から3割の顧客が生み出します。
潜在的に売上や利益をもたらす顧客をいかに攻められるかがポイントになります。
下の図で考えてみましょう。
真ん中の三角が顧客です。ここを選別します。
上から売上と利益の大部分をもたらす2割程度のハイセグメント顧客、真ん中が数は多いがそれほど多くの売上ではない8割のローセグメント顧客です。
そして一番下が、これから顧客になるかもしれないプロスペクト(見込客)、リードです。
次に攻めと守りの活動を明確にします。
そして顧客を中心にして左側がこちらから顧客にアプローチする「攻め」の活動、右側が顧客からのリクエストにこたえる「守り」の活動です。
「守り」の活動は、主に納期調整や受注処理などの業務処理系の作業になります。
明確な役割分担
顧客の選別と攻めと守りを明確にできたら、次に役割分担を明確にします。
この役割の明確化というのが簡単なようで結構難しい点です。
たとえば、こんなやり取りがあるかもしれません。
「新規案件は誰がとってくるのですか?」
「フィールドセールス?ビジネスデベロップメント?」
「見積りは誰がやるのですか?」
「インサイドセールス?カスタマーサービス?」
「電話対応はだれがやるのですか」
「インサイドセールス、カスタマーサービス?」
こういうように役割が明確になっていないと、誰が何をやるがあいまいになって仕事の押しつけあいが起きたり、それぞれが仕事に集中できなかったりということになります。
もっと悪くすると、あっちの部門は人が多いとか、こっちは足りないとか部門間に大きな壁ができたりします。
その意味でも、顧客のセグメントと守りと攻めの視点からの役割分担を明確にしておくべきです。
またこの図にもどり役割分担を考えます。
まず、新規市場開拓は言葉どおりにビジネスデベロップメントの役割です。
新しい市場のアカウントの開拓です。
厳密にいうと今いる既存顧客の新規案件ではありません。
次にハイセグメント顧客への攻めは、顧客訪問をするフィールドセールスと中から攻めるインサイドセールスが協力してアカウントマネジメントを行います。
フィールドセールスは、顧客を訪問でしなければできない営業活動をします。
たとえば現場から購買、経営陣などの多くの人たちを巻き込んでまとめなければならないプロジェクトなどの大型案件の発掘や刈り取りなどです。
大きな売上を、ごそっと取ってくるイメージです。
また優良顧客を囲い込むために、経営層から現場のそれぞれの階層でのキーパーソンを巻き込んだ関係構築や強化を行い、顧客の将来の戦略や市場予測、サービスなどの関する情報を入手して会社レベルの新たな価値提案をします。
一方でインサイドセールスは、訪問せずに現場のキーパーソンに価値提案をしながら案件を引き出して売上につなげていきます。
大切なのは、単に商品を売り込むのではなくて価値を売ることです。
顧客の目標とそれを実現するためのニーズや抱えている課題・悩みを理解して解決策であるソリューションを提案することです。
価値をうることで信頼もたかまり、大きな案件がとれるようになります。
フィールドセールスとインサイドセールスは互いの強みを生かしてハイセグメントにいる重要顧客の売上と利益を伸ばします。 そのためにやるべきことは、
- 売上が見込める優良顧客と案件を獲得すること
- 優良顧客を育成すること、つまり1顧客あたりの売上(売上/アカウント)を増やすこと
- 優良顧客の離脱を防ぐこと
です。
ハイセグメントの守りは、カスタマーサービスが行います。
守りとは納期調整や受注処理といった業務処理をさします。
大きな会社であることが多いハイセグメントの顧客には、協定価格といった特別な価格設定があったり、VMI(Vendor Management Inventory)などの特別な在庫管理や納品ルールがあったり、EDIやeProcurementといったシステム連携など特殊な業務処理あったりします。
こういった特別や処理をいかにシンプル化し、標準化し、そしてAIなどによってできるだけ自動化していくかという部分が守りにおけるチャレンジになってきます。
こういったチャレンジを乗り越えてQCT(Quality、Cost、Time)を管理し顧客体験、カスタマーエクスペリエンスを高めていきます。QCTをさらに進めてPQCDSM(Productivity、Quality、Cost、Delivery、Safty、Morale)という場合もあります。
次にローセグメントです。
ローセグメントには人的リソースをかけずに行うことを基本に考えます。
ローセグメントへの攻めはマーケティングコミュニケーションです。SEOやPPCなどのネットチャネルを主に、様々なメディアを使ってコミュニケーションを行います。
コンテンツマーケティングやオンラインセミナーなどを使いながら人的リソースをあまりかけずに案件をとっていきます。
守りはeコマースなどのセルフサービスを活用し、在庫確認や発注はお客様でやっていただき、それにともなう業務処理も自動化します。
ルーチンのプロセスなどはRPA(Rpbotics Process Automation)を活用します。自動化するためには業務プロセスのシンプル化と標準化がかかせません。
問合わせ対応も、FAQをつくり、顧客データベースと連携させたチャットボットやバーチャルエージェントなどによる自動化をおこなっていきます。
プロスペクト(見込み客)やリードはコンテンツマーティングなどによるデマンドゼネレーションをMA(マーケティングオートメーション)により自動で行います。
いかに質の高い(将来利益を出す)プロスペクト(見込み客)やリードを集められるかがポイントです。
スコアリングによって選別されたプロスペクト(見込み客)やリードはSQL(Sales Qualified Lead)としてリード育成専門のインサイドセールスがフォローしてコンバートさせます。
ここで、セグメントと守り攻めごとの役割を整理します。
- 新規市場開拓―ビジネスデベロップメント
- ハイセグメント(キーアカウント)人的リソース
- 攻め(アカウントマネジメント)ーフィールドセールスとインンサンドセールスで連携して拡大
- フィールドセールス 訪問してプロジェクトなどの大型案件の発掘と刈り取り、関係強化
- インサイドセールス 内から訪問せずに価値提案(バリューセリング)
- 守り(業務処理)ーカスタマーサービスがQCT、PQCDMを管理しての業務処理(特殊処理をシンプル化標準化推進によりいかに効率化させるかがチャレンジ)
- ローセグメント 人的リソース最小限
- 攻めーマーケティングコミュニケーションミックス
- 守り(業務処理)ーシンプル化標準化から自動化(eCommerve/AI)
- プロスペクト(見込み客)やリード
- マーケティングコミュニケーションによるデマンドゼネレーション
- SQLSQL(Sales Qualified Lead)を抽出しインサイドセールスがアプローチして案件化
陥りやすい注意点と対策
ここで陥りやすい注意点を2つあげます。
- ローセグメントにリソースを使ってしまう
- プロダクトセリングをしてしまう
まず「ローセグメントにリソースを使ってしまう」という点ですが、これは結構おきています。
特に営業スタイルが古い会社は要注意です。
営業が時間を使うべき顧客と使うべきでない顧客を正しく選別することが重要です。
利益のあがらない顧客に営業マンが時間をつかってはいけません。
また特別対応をしてもいけません。
例えばお客様に特別な梱包にしてくれと頼まれても、利益が出ていない今後も出る見込みのない顧客であれば丁重にお断りしなければなりません。
特別な対応をすれば当然そのために作業が発生します。
作業するには時間がかかります。そして時間はコストです。
もしもこのお客様が大きな利益をもたらしてくれるお客様であれば問題はないかもしれません。
でも年間で1回や2回程度の購入しかないのであれば、特別な事をやればやるだけ利益が減り赤字になる場合もあります。
営業マンがこういったコスト意識をもって選ばれた顧客に価値を売る行動していることが重要です。
そしてLTV(Life Time Value)の高い顧客を増やすこと、つまり顧客との関係を強化して1顧客あたりの売上(売上/アカウント)を増やすことが営業マンの価値です。
次に陥りやすいのは「プロダクトセリングをしてしまう」です。
価値提案をできずに商品をうっていると売上や利益は伸びません。
顧客の目標とそれを実現するためのニーズや抱えている課題・悩みを理解して解決策であるソリューションを提案することです。
顧客を成功させる、この会社とつきあっていると提案があってうまくいくなと思ってもらうことです。
その意味では、営業マンがいかに効果的な質問できるかが重要です。
FOCAといわれる質問が効果的です。
FOCAとは、Fact(事実) Opinion(意見)Change(変化)Action(行動)の略です。
こういった質問をすることで、顧客の必要なことや優先事項をききだし、それをもとにした価値提案、バリューセリングをします。
下から上へシームレスに動かす
再びこの図にもどります。
この図の一番下はプロスペクト(見込み客)やリードです。
ここから質の高いプロスペクト(見込み客)やリードを発見し、SQL(Sales Qualified Lead)としてリード育成専門のインサイドセールスがフォローして、優良顧客化できるかが大切です。
下から上へ向かっていく流れを作ります。
「プロスペクト(見込み客)やリード→SQL→ローセグメント→ハイセグメント」という流れをつくります。
もちろんプロスペクト→ハイセグメントというジャンプができれば最高です。
この下から上へのシームレスな流れをつくるためには、マーケティング活動と営業活動の連携が必要になります。
以下の図がながれです。
まずは上段のカスタマージャーニーと呼ばれる顧客獲得プロセスですが、ここは通常は主にマーケティング(あるいはマーケティングコミュニケーション)チームが行っている領域です。
標的市場→認知者→リード→プロスペクト→カスタマー→プロモーターの流れの部分です。
そしてカスタマーまたはプロモーターになった顧客の中から潜在的な売上をもっていそうな顧客をリスト化して売上をあげていくのが、下の段の獲得した顧客を育成するプロセスがカスタマーストーリーです。
ここが通常は営業活動の中心的な部分であり、リスト→提案→案件化→見積→受注の部分になります。この顧客獲得から顧客育成の流れをマーケティング部門と営業部門が連携して動かすことが大切です。
この流れをプロセス化してデータをみて改善しながら最適化します。
よくある部門構成ごとの役割をシンプルにすると以下になります。
- マーケティング デマンドゼネレーションによるSQL創出 カスタマージャーニーの最適化
- 営業 バリューセリングによるアカウント育成 カスタマーストーリーの最適化
- カスタマーサービス QCT/PQCDSMのマネジメント カスタマーエクスペリエンスの最適化
B2Bの場合は、顧客は会社とその中の個人であり、そのためにプロセスも処理も複雑です。
ということはB2Bの顧客をもった会社は、自社での活動においても多くの部門や人がかかわります。
当然、攻めも守りも複雑になります。
部門間、そこで働く人が向かっていく方向と互いの役割を共有し理解し、連携して強い組織を作っていくことがパフォーマンスをだす近道です。
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