商品サービスミックスについて考える
- 商品・サービスミックスミックスとは、価値を生み出す商品・サービスの組合せです
- それにより、適正な組合せを決めて、リソースを適正に配分し戦略を実行することができます
詳しくは以下のコラムで
商品・サービスミックスとは
商品・サービスミックスはプロダクトミックスということもあります。商品だけで考えるのではなく商品の周りにあるサービスが加わってはじめて独自の価値がつくられるという観点から、私は商品・サービスミックスと呼んでいます。またトレーニングや調査や検査のようなサービスを商品として売る場合も多くなってきています。
商品・サービスミックスは顧客に提供する商品・サービスの組合せです。
マーケティング戦略とは簡単にいうと、「誰に」、「何を」、「どうやって」提供して対価を得るかという方法ですが、この「何を」の中心的な部分が商品・サービスミックスになります。
商品・サービスミックスのサブミックス
商品・サービスミックスは2つのポイント(サブミックス)から考えます。
- 商品
- サービス
まずは商品ですが、ここでの商品とは顧客に提供して対価を頂くモノの事です。商品にも以下のようないろいろな要素が含まれます。
- 商品レンジ(ラインナップの幅と深さと長さ)
- 機能、仕様、特徴、品質などのニーズに対する適合性
- ブランド、ネーミング、デザイン、サイズなどの商品イメージ
- ラベル、包装、パッケージ、梱包などの商品提供の状態
1つ目の要素の商品レンジとは商品ラインナップの広さと深さと長さのことです。幅とは商品の種類であり、深さとはバリエーションで、長さとは品目数です。例えば工具の場合、ドリル、ドライバー、カッター、ハンマー、グラインダーというのは種類なので商品の幅です。
そしてカッターの中でも手動カッター、電動カッター、木工用カッター、鉄工用カッターというのは商品の深さ(バリエーション)があります。さらに電動カッターの中でも13ミリ、10ミリ、8ミリといったサイズが用意されており、これは商品の長さということができます。
2つ目の要素は機能、仕様、特徴、品質などのニーズに対する適合性ですが、これは商品やサービスの企画コンセプトに関連するもので、顧客のニーズを満たす機能、仕様、特徴、品質などのことです。
例えば電動ドリルなら電気で簡単に穴をあける機能があり、寸法や使用電源や回転数といった仕様があります。そして電気の絶縁機能があるといった特徴や耐久性といった品質があるといった具合に、顧客のニーズを満たすための商品やサービスがどのようにできているのかということです。
3つ目は商品イメージに関する要素です。商品を選ぶ際にはブランドやネーミング、デザイン、サイズなどの商品やサービスのイメージも重要になります。ターゲットとする顧客が好むようなイメージを作り上げなければなりません。どんな良い商品を作ってもブランドイメージを損なったり、ネーミングやデザインが的外れで全く売れなかったりということも起きます。
3つ目は商品提供に関する要素です。ラベル、包装、パッケージ、梱包などの商品提供の状態もイメージの一部です。ブランドやラインナップの上位である高価なハイエンドな商品であるにもかかわらず商品価格に見あわない安っぽく壊れやすいパッケージでは届ける価値が低下してしまいます。
商品レンジを考えるープロダクトバリューハイラキー
商品レンジについてもう少し詳しく考えていきましょう。商品レンジを決める際にカスタマーバリューハイラキーという考え方があります。商品を購入する顧客にとっては、どの商品・サービスも全く同じに重要という事ではありません。必ず必要なものもありますし、あれば良いなあというレベルのものもあります。その価値の階層がカスタマーバリューハイラキーです。企業が売りたいものを一方的にそろえるというプロダクトアウトの発想ではなく、市場や顧客が求める商品やサービスを用意するというマーケットインの発想が必要です。
例えば電動カッターの場合、カッター本体や電源アダプターは必須ですが、予備バッテリーやメンテナンスキットは必須ではありません。市場や顧客を知り、あなたの会社が提供する価値の本質(コアバリュー)は何かを整理しておく必要があります。以下は5層のカスタマーバリューハイラキーですが、こういったツールを使って商品レンジを組み立てます。
価値の本質を考えるということはPOP、PODといったサービスののポイントを明確にすることでもあります。
- POD (Points-of-Difference)
企業に特有な商品・サービスのもつ価値であり、他企業にないブランド差別化のポイント。 - POP(Points-of-Parity)
企業に特有ではないが、市場に存在する為に必須なポイント。または競合のPODを打ち消すもの。
こういった考え方を明確にしてマーケッターは商品・サービスのポジショニングを行い、サービスのポイントをメッセージとして市場に伝えていく訳です。
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サービスミックスを考える
商品・サービスミックスの2つめのポイントはサービスですが、ここでいうサービスとは購入のしやすさの組合せです。商品とサービスは互いに深く関連しており、最近のビジネスにおいては商品だけがよければ問題ないという事はあまりありませんし、差別化の要素としてもサービスの内容と品質がますます大切になっています。顧客の購買プロセスに対応して商品選択の際の内容確認、注文、支払、受取、使用開始などの要素から構成されています。
- 商品の見つけやすさ
- 注文のしやすさ
- 支払いのしやすさ
- 受取のしやすさ
- 使用開始のしやすさ
1つ目の要素は商品の見つけやすさ、選択の際の内容確認のしやすさです。ここには以下のような項目が考えられます。
- オンラインカタログ(Webサイト)があるか?検索や階層構造の使いやすいか?
- 紙カタログや、保管するカタログや資料は十分か?
- 価格や在庫、納期などの内容確認はできるか?正確か?
- 仕様(スペック)の表示機能はあるか?データシートなどの必要な情報にアクセスできるか?
- 仕様の比較機能や選択に必要なツールは準備されているか?
- ヘルプやFAQなどが用意されているか?
- カスタマーサービス、ヘルプデスク、テクニカルサポートといった問合せ対応窓口はあるか?
- 商品レビューや事例などは紹介されているか?
- 関連商品やお勧め商品がわかりやすく表示されるか?
2つ目の要素は商品の見つけやすさ、選注文のしやすさです。ここには以下のような項目が考えられます。
- Eコマースサイトがあるか?
- 見積り方法はわかりやすいか?
- 注文方法はわかりやすいか?
- 注文チャネル(Web・電話・Fax・店頭・メール・フィールドセールス)は十分か?
- 営業時間は?(電話や店頭チャネル)
- 注文履歴は保存できるか?再注文はしやすいか?
- E-ProcurementやEDIに対応しているか?
3つ目の要素は支払いのしやすさです。ここには以下のような項目が考えられます。
- 支払い形式は顧客のニーズに適応しているか?(前払い/即時払い/後払い/分割払い/定期払い
- 支払方法は顧客のニーズに適応しているか?(現金/振り込み/手形や/クレジット/電子マネー/交換)
- 支払い条件や信用取引条件
4つ目の要素は受取のしやすさです。ここには以下のような項目が考えられます。
- 納品スピードや配送サービスは顧客のニーズに適応しているか?
- 配送パターン(配送日指定、計画配送)顧客のニーズに適応しているか?
- 配送状況表示機能はあるか?
5つ目の要素は受取のしやすさ(使い方の説明やアフターケアなど)です。ここには以下のような項目が考えられます。
- 使い方は簡単か?
- 説明書や購入後に見られる動画などのサポートは顧客のニーズに適応しているか?
- 教育プログラムやセミナーの提供があるか?
- ヘルプやFAQなどが用意されているか?
- カスタマーサービス、ヘルプデスク、テクニカルサポートといった問合せ対応窓口はあるか?
サービスを考える際のポイントをあげましたが、商品同様にサービスはなんでもよいから総花的にやればいいということではありません。企業の戦略である「誰に」「何を」提供するのかという基本の考え方にそって顧客が必要とするサービスを提供しなければなりません。
PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)
顧客に提供する商品・サービスミックスの適正な組合せや配分を考える際に、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)という方法を使うことがあります。PPMで商品・サービスの現状と今後を分析します。
このPPMはボストンコンサルティングが開発した方法で、横軸に市場占有率(マーケットシェア)、縦軸に成長率をとって4つのグループに商品・サービスを分類します
商品・サービスを4つに分類し4つのどこに自社および競合他社の商品・サービスが位置するかを知ることによって、人・モノ・金といった経営資源の戦略的な配分を判断し今後の商品・サービスの戦略を考える参考にします。PPMの4つのグループは以下です。
- 金のなる木(キャッシュカウ) 高シェア×低成長のグループで、必要資金は少なく利益が多いので、この状態をできるだけ維持します。
- 花形(スタ-) 高シェア×高成長のグループで、必要資金も多いが収益も大きい。競合も多く存在しており継続して資金を投入する必要がありますが、シェアが確保できれば利益を生み出す金のなる木に、出来なければ問題児になります。
- 問題児(ワイルドキャット) 低シェア×高成長高成長のグループで、将来花形商品へと進化する可能性を秘めていますが必要資金が多いためこのままではダメで、いずれ花形に育てられるか負け犬となるかの見極めが必要です。
- 負け犬(ドッグ) 低シェア×低成長のグループで、基本的には撤退を考えるべき商品・サービスです。利益が見込めず、今後の成長もないため撤退を検討する必要があります。
商品・サービスの戦略を考える
PPMの4つのグループがわかったところで、それぞれのグループにおける戦略を見ていきましょう。とることのできる戦略は大きく4つあります。
●維持戦略
主に金のなる木や花形でとる戦略です。利益を最大限に引き出すために必要な投資を行います。
●収穫戦略
今後の成長は期待せず、投資をしないで今の状態のうちに利益をかりとります。金のなる木、問題児、負け犬でとる戦略です。
●拡大戦略
問題児に対して投資を積極的に行って、問題児から花形商品への成長を促進します。
●撤退戦略
問題児や負け犬で利用する戦略であり、その分野からの撤退を目指します。
成功する商品・サービスはブルーの矢印のようなライフサイクルをたどります。市場に商品・サービスを投入した最初は市場のシェアも低く成長率も伸び悩んむものの徐々にシェアが伸び成長が加速して、問題児から花形へと移行していきます。そして最終的には市場の成長が鈍っていく、そのころには金のなる木となって商品・サービスの寿命を終えるというのが良いパターンです。
一方で失敗する商品・サービスは赤い矢印をたどります。投資をしたものの市場でのシェアがあがらずに市場の成長についていけず、花形になることなく問題児から負け犬へと移行していくの撤退に追い込まれるのが悪いパターンです。
商品・サービスの状態を把握して人・モノ・金といった経営資源の戦略的な配分を判断することが大切になってきます。
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