流通ミックスについて考える
- 流通ミックスは、価値を生み出す人・モノ・お金・情報の流れの組合せ
- それにより商流・物流・情報の流れ全体をコントロールする方法を決め戦略に反映する
詳しくは以下のコラムで
流通ミックスとは
マーケティングミックスの3つめは流通ミックスです。
ビジネスは、生産者が商品・サービスを作り、販売者などをへて最終的にそれを利用する顧客へ商品・サービスといった価値を届けて対価を頂くことでなりたっています。この一連の流れを「流通」といい、そこには「人」、「モノ」、「お金」、そして「情報」などが関わってきます。
流通ミックスは3つのポイント(サブミックス)から考えます。
- 商的流通
- 物的流通
- 情報流通
流通ミックスといった場合は、商的流通と物的流通をさす場合が多いかですが、ビジネスにおける情報の影響が大きくなってきている現代においては情報流通も重要な要素になってきています。
流通ミックス3つのポイントのまずは商的流通から考えてみましょう。
商的流通 - サプライチェーン
商的流通は商流ともよばれ、調達・生産から販売・消費までにいたる流れのことです。日本は商流が複雑なので価格上昇の一因になっているということもいわれるため商流の短縮化・合理化の必要が重要になってきました。以下のような価値の連鎖(チェーン)を考えることで流れが見えてきます。
- サプライチェーン - 原材料が調達され商品が消費者に渡るまでの生産・流通プロセス(供給連鎖)
- バリューチェーン - 市場からのインプットを価値アウトプットに変えるための企業活動(価値連鎖)
流通ミックスの考え方の中でコアになるのがサプライチェーンです。サプライチェーンとは、原材料が調達され商品が消費者に渡るまでの生産・流通プロセス(供給連鎖)です。
具体的には「原材料・部品調達 → 生産 → 物流 → 販売」という一連のモノの流れのことを指します。そしてこのサプライチェーンには、「サプライヤー → メーカー → 物流事業者 → 卸売事業者 → 小売事業者 → エンドユーザー」といった業者や人が関わってきます。一方で、情報やお金は、サプライチェーンと逆方向に流れます。
こうしたモノの流れやそれにかかわる業者や人と、お金の流れを情報の流れと結びつけ、サプライチェーン全体で情報を共有・連携し、全体最適化を図ることをサプライチェーンマネジメントと呼びます。
サプライチェーンの各部分を最適化するだけではなく、全体のバランスを見て経営的な視点から商流・物流・情報の流れ全体をサプライチェーンマネジメントでコントロールすれことにより効率を向上することができます。
価値の連鎖ーバリューチェーン
企業内部の活動と流れを考えるのに役立つのがバリューチェーンです。バリューチェーンとは、市場や顧客からのインプットを顧客が代金ろいう価値としてのアウトプットに変化させていく為の“価値の連鎖”です。
商品やサービスを顧客の手に届けるまでには、様々な企業活動が含まれます。ポーターのバリューチェーンでは一般的な細分化の基準として、価値活動を5つの主活動と4つの支援活動に分類しています。
主活動は、部品や原材料などの購買、製造、出荷物流、販売・マーケティング、アフターサービスなどがあります。支援活動は、主活動を支える人事や経理、技術開発などの間接部門があります。
そして商品・サービスの価値であるアウトプットと、それを生み出すすべての主活動と支援活動に価値活動に要したコストの差額が利益(マージン)です。それを表したのが下のポーターのバリューチェーンの図です。
バリューチェーンで事業活動を機能ごとに分類することで、どの部分(機能)で付加価値が生み出されているか、競合と比較してどの部分に強み・弱みがあるかを分析し、事業戦略の有効性や改善の方向を探るのが狙いです。
ですので分類において重要なのは厳密性ではなく、企業の多彩な活動に着目し、それらの役割にかかるコスト、全体としての事業前略への貢献度を明らかにすることです。バリューチェーンを用いて業界分析をすることで、業界や市場ごとに競争を有利に運ぶポイントが異なることが分かり、業界のKSF(成功要因)を発見する時などに有効な考え方です。
物的流通
流通ミックスの2つ目は物的流通です。物的流通とは物流ともよばれ、物資を供給者から需要者へ移動する活動の事であり、サプライチェーンの一部になっています。
物流はモノを運ぶだけの単なる運送とは異なるので注意が必要です。ここでいう物流とはモノの流れの総合的な管理を行うことによって品切れの防止や流れの効率化、在庫やコストの削減などの経営の課題を解決し付加価値を提供するの機能であり、物流をさらに戦略的な経営管理と位置づけてロジスティックスとも呼ぶこともあります。
物流、ロジスティックスには大きく以下の6つ機能があります。
- 保管 - 供給者からの物資をいったん倉庫や物流センターに保管すること
- 輸送 ー 物資を供給者か消費者のもとに移動させること
- 荷役 - 棚入れやピッキングなどの入庫と出庫の作業
- 包装 - 物資を衝撃や汚れなどから保護するためにパッケージングすること
- 流通加工 ー 倉庫や物流センターにおいて物資に加工を行うこと
- 情報システム - 倉庫管理システムや輸配送管理システムで物資の正常な流れを支援すること
1つ目の機能は保管です。物資の輸送は、多くの場合供給者から直接エンドユーザーへ届けられるわけではないので、いったん倉庫や物流センターに保管することになります。そうすることで生産と消費の時間的なギャップを埋め、保管しておいた物資を計画どおりのタイミングで配送することで安定した供給を可能にします。
2つ目の機能は輸送です。輸送は生産と消費の位置的なギャップを埋めるために物資を供給者から消費者のもとへ移動させることであり、倉庫や物流センターから配送を鉄道やトラック、船舶などのさまざまな方法を使って目的地まで運ぶことです。物量やコスト、納期などを考慮して輸送方法は選択されます。
3つ目の機能は荷役です。荷役とは入庫や出庫関連の業務のことです。商品を倉庫や物流センターに運び入れて、分けしたり出荷したり、積みつけや積み下ろし、保管場所から取り出すピッキングなどの作業もあります。
4つ目の機能は包装です。物資を衝撃や汚れなどから保護するためにパッケージングすることで、包装の種類には、個別にパッケージングする個装やダンボールなどに詰める外装などがあります。商品の区分表示も包装の段階で実施する作業の一つです。
5つ目の機能は流通加工です。倉庫や物流センターにおいて物資に加工を行い、生産段階だけでなく流通段階でも加工を施せるようにすることで、顧客のニーズに柔軟に応えられるようになるメリットがあります。個別の商品をギフト商品としてセットにする作業などが代表的な例です。
6つ目の機能は情報システムです。情報システムによって物資の正常な流れを支援します。倉庫管理システムや輸配送管理システムと呼ばれるものがあり、在庫管理や配車計画といった高度なサポートを行います。
物流やロジスティックスの役割や機能はインターネットの発達とともに重要度が高まると同時に、テクノロジーの発展とともに変化をしてきています。また物流やロジスティックスはサプライチェーンの一部であり、物流やロジスティックスを含んだサプライチェーン全体を経営的な視点から管理するのが前述のサプライチェーンマネジメントです。
情報流通
流通ミックスの最後は情報流通です。サプライチェーンマネジメントを効果的に行うためにも情報の収集と管理は欠かせません。いろいろな情報がありますが、ここでは特にマーケティング戦略上重要な顧客の関連する以下の4つの情報とその管理方法とシステムについて考えます。
- 基幹業務(ERP)
- 顧客獲得のための情報と管理(MA)
- 顧客育成のための情報と管理(SFA)
- 顧客維持のための情報と管理(CRM)
まず基幹業務とは企業がビジネスを行う上で必須となる主要な業務であり、その基幹業務を支える重要なシステム全般を基幹システムと呼びます。一般的に基幹システムは次の6つに分類できます。
生産管理システム
販売管理システム
購買管理システム
在庫管理システム
会計システム
人事給与システム
これらは通常それぞれ独立したシステムとして構築され、データベースや画面仕様や帳票出力仕様などが異なりますが、これらの情報資源を一元管理しリアルタイムな経営判断に役立てるという考え方があります。それがERP(Enterprise Resource Planning)という経営効率化を達成するための概念です。
その概念をベースに作り上げたシステムをERPと呼びますが、これは企業経営に欠かせない多くの基幹業務システムをオールインワンで提供するソリューションのことで、基幹業務のほかにも、営業支援管理、プロジェクト管理、人材管理、マーケティング管理、Eコマース、ビジネスインテリジェンス(BI)といった機能をもつものもあります。企業経営に必要なシステムは考えられる限り全て揃えたというものですが、各ERPの商品によって特徴が異なりERP商品ごとに機能の有無や能力の違いが存在します。
多くの場合には、顧客獲得のための情報と管理、顧客育成のための情報と管理、顧客維持のための情報と管理は基幹システムとは切り離して運用することが多いと思います。
顧客獲得のための情報と管理とは、新規顧客が経験するカスタマージャーニー(認知→リード→プロスペクト→カスタマー→プロモーターの流れ)に必要な情報の収集と管理のことで、MA(Marketing Automation)というシステムを活用するのが通常です。
MAは、潜在顧客や顧客に対して適切なタイミングで適切なアプローチをするための支援をするシステムであり、具体的な機能としては、リード管理やメルマガ配信、アクセス解析などのマーケティングコミュニケーションに必要な機能が備わっています。
顧客育成のための情報と管理とは、営業活動のプロセスの可視化や営業活動の効率化などを図るための情報の収集と管理のことで、SFA(Sales Force Automation)という営業支援システムを活用するのが通常です。営業活動のプロセスとはカスタマーストーリー(リスト→提案→案件化→見積り→受注の流れ)のことで、この営業プロセスと活動データをSFAで管理することで効果的な営業活動を行うことができます。
SFAは営業のリソースを効果的に活用するための営業活動支援のシステムであり、具体的な機能としては、顧客毎の売上情報や、営業プロセスのなかの案件管理、営業の訪問や商談履歴などの営業に関わるデータを一元管理することができます。
顧客維持のための情報と管理とは、企業が顧客と良好な関係を築くための情報の収集と管理の事で、CRM(Customer Relationship Management)という顧客管理システムを活用するのが通常です。顧客が商品やサービスの利用をする際には、E2Eカスタマーエクスペリエンス(CX)といわれる内容確認→注文→支払→受取→使用開始などのさまざまな体験をしますが、この中での企業と顧客との接点の情報収集と管理を行うことで関係の強化を行うことができます。
具体的に顧客接点とはあらゆるチャネルからの問合せの履歴や対応状況といった情報を一元管理することで、この情報をもとに担当者に限らず最適な顧客対応を行うことができたり、顧客の声やクレームといった生の情報を体系化して分析することによってプロセス改善をすることができたりします。
これまで営業担当が個別に管理していた顧客との接触履歴や連絡先などの情報を一括で管理することができるなどSFA(Sales Force Automation)営業支援システムとCRMは(Customer Relationship Management)顧客管理システムは、互いに共通する部分もあるのでそれぞれの目的と管理範囲を明確にする必要があります。
CXと密接にかかわる流通ミックス
流通ミックスは、価値を生み出す人・モノ・お金・情報の流れの組合せです。商的流通・物的流通・情報流通全体をサプライチェーンマネジメントでコントロールすれば効率があがります。
そしてそれは結果的にE2Eカスタマーエクスペリエンスを向上させ売上をあげることにつながっていきます。
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